病児保育の概念

病児保育とは、 単に子どもが病気のときに、 保護者に代わって子どもの世話をすることを意味しているわけではありません。 本来子どもは、 健康なときはもとより、 病気のときであっても、 あるいは病気のときにはより一層、 身体的にも精神的にも、 そして社会経済的、 教育・倫理・宗教的にも、 子どもにとって最も重要な発達のニーズを満たされるべくケアされなければならないのです。 つまり、 健康であっても病気のときであっても、 子どものトータル・ケアが保障されることが、 子どもの権利条約においても摘されているところです。

このように、 病児保育というのは、 病気にかかっている子どもにこれらすべてのニーズを満たしてあげるために、 専門家集団 〔保育士、 看護婦 (士)、 栄養士、 医師等〕 によって保育と看護を行い、 子どもの健康と幸福を守るためにあらゆる世話をすることをいいます。

病児保育事業は、 国の施策としては病児デイケアパイロット事業にはじまり、 病後児デイケア・モデル事業をへて、 平成7年度から市町村補助事業として 「乳幼児健康支援デイサービス事業」、 そして翌年事業名が再度変更され、 「乳幼児健康支援一時預かり事業」 として全国各地で展開されています。 このように病児保育事業の名称は、 国による制度の変遷とともに変わり、 ともするとその理解に混乱を生じている可能性があります。

「病児保育」 という場合には、 先に示した通りに広義に解釈して欲しいと思います。 すなわち、 基本的には母親の就労の有無に関わらず、 子どもの自宅療養はもとより、 病児保育室におけるケア、 そして入院治療を受けている子ども達の生活援助の総てを対象として考えるべきものと思います。 その意味では、 小児病棟における保育士たちによる病児への援助も、 広義の病児保育といえます。 しかし、 一般的に病児保育というと、 母親が就労等のために、 保育所に通っている子どもが病気をした際に、 親の就労の継続性を確保するために、 一時的に病児の世話をする狭義の保育を意味しているのが現状です。

当初の、 国の施策による 「病後児デイケア」 は、 保育所に通所している病気の回復期にある子どもが、 保育所における集団生活にはまだ適さない場合を対象に、 育児と就労の両立支援を目的としたものでありました。 その後、 「乳幼児健康支援デイサービス」 「乳幼児健康支援一時預かり事業」 に変遷したわけですが、 この名称の変更は、 基本的には 「病後児デイケア」 と同義ですが、 保育所に通園している子どものみならず、 在宅の乳幼児が病気をしたときにも利用できるように対象が拡大されているのが特徴で、 “乳幼児健康支援”という名称もこの意味でつけられたものです。

全国病児保育協議会 発行書籍より