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新会長ご挨拶

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 平成28年7月16日の理事会において全国病児保育協議会会長を拝命しました。就任にあたり病児保育のあり方と今後の方向性について述べさせていただきます。

 病児保育は昭和41年6月世田谷区のナオミ保育園が園内方式共済会運営として発足、さらに昭和44年4月大阪の枚方病児保育室が医療機関併設型として、初の地域センター方式としてスタートしました。そして平成3年9月全国14カ所の病児保育施設の参加をもって、全国病児保育協議会が発足、初代会長は枚方病児保育室の保坂智子先生が選出され、協議会の発展に向けてご尽力を賜りました。当初は働く母親のための就労支援が目的でした。

 しかし平成3年全国病児保育協議会の発足後、病児中心の保育にシフトし、就労支援とともに子どもの育て方、育児支援の方向にも動き出しました。この大きなうねりは厚労省小児有病児ケアに関する研究班(研究代表者:帆足英一氏)の業績に負うところです。その後病児保育協議会は発展し、皆様のご支援及び稲見前会長のご努力の結果、平成24年7月に一般社団法人全国病児保育協議会として再発足することとなりました。一層の病児保育の充実と社会的貢献が期待されています。

 平成27年4月より施行された厚労省の子ども子育て支援法により病児保育事業の中心は子どもそのものであり、病児への最適な保育環境の提供とそれを達成するための育児支援、結果としての就労支援ということになります。病児保育協議会では発足当時から病児保育とは子どもが病気の時に保護者の代わりに世話をすることではなく、健康な時と同じように病気の時も身体的、精神的、社会経済的に、さらに教育・倫理・宗教的に子どもの発達に寄り添い保育することと定義しています。ようやく国の施策が協議会の考え方に追いついてきたたわけです。

 問題はこれを達成するためには何が必要か、私たちはどう行動しなければならないのかということです。

 それは3つに要約されます。組織としての病児保育協議会の強化、安心安全を担保するための努力、病児保育をサイエンスにするための試み、すなわち病児保育学の確立です。


1.病児保育協議会組織の強化

 組織として最も重要なことはガバナンス(統治)です。定款にある協議会の目的、使命、責任を全うできるように管理することです。その責任は理事会にありますが、その総括責任者として職務を全うする決意です。会長はじめ理事、協議会各加入施設に至るまで、高いコンプライアンス(決まり事を守る)が要求されています。

 ガバナンスの基に理事会でのストラテジー(戦略)の策定、タクティクス(実際の作戦:理事会、各委員会が担当)の作成、アクション(行動:加入者全員による)が組織に必要です。組織がいかに強固であっても加入施設が少なくては、全国的な組織としてその地位を確立することはできません。

 全国に病児・病後児施設が1395施設ある中で、現在の加入施設は現在605施設にとどまっています。協議会の存在価値を高め、活動を公的にも一般の方にも認めてもらうためには組織率を高める活動が大切となります。


2.安全安心を担保するための努力

 これには病児保育制度の改善、病児保育施設のリスク管理、スタッフによる病児への保育力の養成及び維持を図る活動があります。病児保育制度でいえば、病児保育児の数を確保するために保育士の担当する病児数が増やされた経過があります。また新たに子ども支援センターの役割を求められております。協議会として制度の変更、新規役割に関して安全性を重んじ、病児へのメリットある制度や運営を目指さなければなりません。

 そのために新委員会として「病児保育あり方委員会」を設置する予定です。ここでは派遣型病児保育サービスについてもそのメリット、デメリットを検討し、その運営の在り方について検討いたします。病児保育施設は医療機関併設型、保育園型、単独型にわかれ、さらに実際の運営は施設により差が出てきております。協議会ではインシデント委員会、調査・研究委員会を設け全国の施設の在り方の検討、インシデント、アクシデントなどのリスク調査を行って、リスクに対する情報の共有化を確保しております。

 スタッフによる病児への保育力の養成維持には研修委員会が担当し、全国病児保育研究大会での研修会の開催や、各地区ブロック研修会への講師派遣をおこなっています。今後はこの研修制度の充実をはかり各地区ブロック毎に展開する予定です。さらに病児保育専門士制度を確立し、病児保育に従事し十分経験ある保育士、看護師を対象に講習・レポート作成・面接試験を行い、合格者には病児保育専門士としての資格を授与しております。全国的な研修の機会や研究発表は毎年行われている全国病児保育研究大会がその役割を担っております。

 毎年1,000名前後の参加者がありますが、研究発表の場、あるいはブラッシュアップする機会となるよう立案され、今後参加者の増加が期待されます。病児保育のあり方、施設の作り方、スタッフに必要な情報、知識をまとめたものに「必携病児保育マニュアル」があり病児保育での標準的な教科書としての評価も定まっています。


3.病児保育をサイエンスにして、病児保育学の確立を図る

 病児保育にはいくつかの懸念があることは事実です。それは小児科医をはじめとする医師、あるいは保育関係者、保護者の方に広く存在します。最も大きい懸念は病気の時に他人に預けていいのか、病気の時ぐらい保護者(特に母親)が看るべきだという考えです。その根拠は病気の時に保護者が看ないと愛着形成が遅れ、健全な親子関係が成立しないというものです。でもこれは事実でしょうか。病児保育が存在しない前の親子関係の考察がこの考えの基になっているようです。

 病児保育は病児のための制度です。親がみなければ愛着が形成されないのであれば、保育所も同様となります。むしろ病児保育は愛着形成を促進するというエビデンスを見出したいと思います。また別の懸念は病児保育に預けると病気がうつるというものです。残念ながらそれは否定できません。では保育園では感染症がうつらないのでしょうか。そんなことはないことは皆様がよくご存じです。病児保育とは感染のリスクがある病児を預かり、感染を広めることなく保育しようとするシステムです。

 そのために感染症対策委員会はガイドラインを作成し、標準的な対応を定めています。さらに加入施設からの病児室内感染例の報告制度を設け、その問題点を検証しております。病児保育での感染症に関する諸問題は学会発表での討論、論文による報告を行い、エビデンスの確立を図っております。その論文発表の場として「病児保育研究誌」があり、毎年号を重ねてまいりました。その結果、保育園よりもリスクの少ない環境を提供できるようになっています。会員の皆様の一人、一人がそのエビデンスを確立するために努力してください。そしてそのエビデンスが病児保育学を確立するのです。

 日本の人口は毎年減少し、1億人を下回ることも予想されております。少子化で子ども人口も減ってきておりますが、ここ数年は100万人を超える出生数で維持されているようです。大切に育てられる子どもにとって、病児保育施設は無くてはならないものとなっております。さらに子育てに優しい環境づくりは、出生数の増加に貢献することでしょう。これからの子どもたちにとって、病児保育は健全に成長するための切り札であり、救世主となる可能性があります。

 皆様と共に、最適な病児保育を確立するために進んでいく所存です

 私を皆様と一緒に歩かせてください。皆様もご一緒に歩いてください。

 また未加入の病児保育施設の皆様、こんなに頼りがいのある協議会です。是非ご参加ください。

平成28年8月31日 全国病児保育協議会会長 大川 洋二

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